働きたいあなたへのヒント HaTaキャリ シリーズ3 第3回(2019年12月配信)
☆シリーズ3 子供が独り立ちしたのを機に、今後の自身の働き方や生き方を考え始めた女性。
福山さん(仮名)49歳 女性 保険会社の営業社員 家族:長男22歳と実母と同居
(前回のあらすじ)
子供のため、お金のために、夢中で働いて来た福山さん。子供が独り立ちした後は、もう少し ゆっくりと人の役に立つ仕事をしたいとの思いを抱き始めます。そのために、学び直しや資格にチャレンジして仕事のスキルアップを図るにしても、転職や起業を目指すにしても、目標が漠然としていて何をすればよいのかわからずに戸惑っています。キャリアコンサルタントは、そんな福山さんに、一度立ち止まってこれまでのキャリアや半生を振り返ってみることを勧めます。
(以下前回からの続き CC=キャリアコンサルタント)
福山さん
「キャリアを振り返ると言っても、私、短大出て少し働いた後は、結婚してずっと専業主婦やってましたから。子供が生まれて子育てしていて、離婚してから今の会社に入ったくらいのものですから、『キャリア』なんて大したものじゃないし、そんな振り返りって必要でしょうか?」
CC
「福山さんのようにおっしゃる方も、いらっしゃいます。私が『キャリア』なんて言葉を使ったから難しく聞こえたかもしれませんが、キャリアには、その人の進路や職業、経歴や様々な経験、人生や生き方そのものと言う意味があります。福山さんのこれまでの経歴やご経験を、専業主婦をされていた時も含めて、一度書き出して整理して、詳しい履歴書を作ってみるようなイメージでしょうか。いかがですか?」
福山さん
「でも、履歴書なら昔、今の会社に入る時に作りましたけど、それから変わっていませんし…。」
CC
「履歴書といっても、単に卒業した学校や勤めた会社名などを書くだけでなく、福山さんのように家事や子育てをしながらお仕事もされてきた方なら、それらの経験を通して身についた強みがあると思います。もちろん、今の保険の営業のお仕事を通じて、いろいろな資格を取ったり勉強もされてきたと思いますから、その中で学んだり身につけてきたスキルや、高めてこられた能力もあると思いますよ。」
福山さん
「うーん、まあ、営業職員研修では保険の知識だけでなくて、医療や介護のことや相続のことなんかも勉強しましたけど、どんどん変わるからついて行けてないところもあるし、正直なところあまり自信はないんです。営業トークやお客様対応は営業所内でも一応練習したりしますけど、実際の現場ではいろいろなお客様がいらっしゃいますから、マニュアル通りには行かないことの方が多いですよね。だから、自分で何とかするしかない場面もたくさんありましたね…。」
CC
「お話伺っていると、やはり福山さんがお仕事でがんばって来られたこの十年余の中だけでも、いろいろなご苦労もあって、それらを乗り越えながら、ワークライフバランスにも努力もされて、成果も出しながらお仕事を続けて来られたこと自体が強みだと思いますし、いろいろなスキルや能力も身につけていらっしゃると私は感じたのですが、いかがですか?お客様やいろいろな人に支えられたとおしゃっていましたが、それらも福山さんの強みではないでしょうか。」
福山さん
「…そう言っていただけると、うれしいです。離婚してからは、子供のために夢中で働いてきたから、自分のことなんかあまり考えたことが無かったんです…。ですから、自分を振り返って整理してみると言われてもどうしたらいいか…。」
CC
「では、福山さん、一緒に福山さんのこれまでの人生を振り返ってみましょう。ご存知かもしれませんが、『ジョブ・カード』を使って、福山さんのお仕事の経歴や子育ても含めたご経験、その中から学んだ事や身についたスキル、強み、持っている資格も書いて整理してみるんです。」
《ご参考》ジョブ・カードに関するサイト
福山さん
「そういうものがあるんですね。でも、若い時の仕事のことはあまり覚えてないし、専業主婦の時も関係あるんですか?」
CC
「もちろん、覚えていないことや思い出したくない事まで振り返らなくていいです。ただ、今は専業主婦や子育ても立派なキャリアという考え方がありますし、気づかれていない様々な能力が身についていることもあるんです。福山さん、この機会に一度これまでの人生を振り返って整理してみて、これからの人生に活かせるような経験や強み、それから、これからも大切にしたい事などを考えてみることは、今後の働き方や生き方を考えるうえでも大事なことと思います。お子さんがお家を出られるまでにまだ時間はありますから、一緒にやってみませんか?」
《ご参考》子育てを通して身につく力の例
福山さん
「そうですね、今までの振り返りなんてあまりやったことないので、一度そういうこともしてみるといいかもしれませんね。でも、息子が家を出た後どうしたいかってことは、まだ正直なところ漠然としていて、いなくなったらどうなるんだろうって不安の方が大きいんです。」
CC
「そうですよね、漠然とした不安の方が大きいんですね…。これからお子さんが独り立ちされた後、福山さんがどのような働き方や生き方をされるにしても、これからもずっと大切に守って行きたい事や、譲ったり捨てたりしたくない事を考えてみることも大事かもしれませんね。」
福山さん
「難しそうですけど、私にそこまで考えられるでしょうか。私はどうすればいいのでしょうか?」
CC
「大丈夫ですよ、福山さん。では、まずはこれまでの経歴の振り返りからしてみたいと思いますので、次回、昔お作りになった履歴書があれば持ってきていただけませんか?私の方では、先ほどお話ししたジョブ・カードの用紙と見本を用意しておきます。それから、福山さんが大事にしたい事は、簡単なテストを使ってみて、それをヒントに一緒に考えてみることにしませんか。」
福山さん
「わかりました。ちょっと立ち止まって、今からやることが見えて来ると、もやもやした気持ちが少し楽になりました。これからもよろしくお願いします。」
CC
「福山さんのように、お仕事や人生の節目や転機を迎えた時には、一度立ち止まってこれまでの仕事や人生や、支えてくれる人のことを振り返ってみて、それからその後の目標や計画を考えてみて、そして焦らずに新たな働き方や生き方を始めてみることが大事なのかもしれませんね。」
《ご参考》キャリアアンカーとは
☞人がキャリアの選択を迫られた時に、最も捨てたくない(守りたい)「欲求」「価値観」「能力」「行動特性」などのことです。
その人の軸や核となるもの、自己概念とも言われます。
キャリアを漂流した時の船の錨(アンカー)に例えたもので、8つのタイプがあります。
これらのタイプのどれに該当するかを知っておくと、キャリアに関する意思決定が容易になり、より自分に合った働き方や生き方に近づいて行くと考えられます。
※コンピタンス=成果を生み出す力
出典:「キャリア・アンカー」エドガーH.シャイン(白桃書房)「仕事選びのアートとサイエンス」山口周(光文社新書)
シリーズ3 おわり
◎その後…
福山さんはキャリアコンサルタントと共に、ジョブ・カードを使って職業経験の棚卸しをして、今後も仕事上行かせる能力や強みに気づきました。そして、CCとの面談を続けるうちに、子供が巣立った後の働き方や生き方の目標や大切にしたい事が、少しずつ見えてきました。
次回☆シリーズ4(予告)※内容は変更する場合があります。
高校卒業後、技術職として地道にコツコツと働いて来た女性。遠い将来と思っていた定年まで十年を切り、技術革新も進む会社の中での自らの役割や働き方について考え始めます。