2019年12月掲載
小さな町の交通機関の待合室の会話です。
「どうしても来てくれと所長に頼まれてなあ、来月からまた働きに行くことになったんよ。定年まで勤めて、ようやく会社と縁が切れたと思ってたのに、急に二人も病気で辞めたみたいでな。それじゃあ助けてやらな、仕方ないわなあ。他に頼める人がおらんと言うし。」
待合室の一角のチケット売り場の女性が尋ねました。
「そうなの、大変やねえ。畑もしよるのに、毎日行かないかんの?」
「いやいや、週に3日ほど、一日5時間ほどよ。畑が暇な時は家に居てもすることないし、家内からも健康のためにも、もうちょっと働けと言われとるけんなあ。」
静かな待合室に、白髪の作業着姿の男性の心なしか弾んだ声の方言が響きました。
内閣府の意識調査「60歳以降の収入を伴う就労の意向と就労希望年齢」(平成25年)によると、「働けるうちは働きたい」と考えている方を含めると、半数以上が「65歳以降も働きたい」と考えているという結果があります。
そして、その働き方の希望の多数は「日数や時間を減らして働きたい」というものです。
高齢期の働き方や就労に対する考え方は、それぞれの経済的事情や健康状態、人生観や地域性などによっても様々でしょう。
ただ、高齢者に限ったことではありませんが、人は職場や家庭、地域社会などの中に、どこか自分が必要とされる「居場所」を求めるものではないでしょうか。
そして、「居場所」は一つより複数あった方が良いかもしれません。
そんな自分の「居場所」を見つけるには、働く場所であれ、ボランティア活動などであれ、自ら億劫がらずに足を運んでみること、面倒がらずに人の話を聞いてみること、人との関わりを持ち続けることが必要と思います。
新しい年に、就職活動をされる方。
新しい「居場所」を一つ増やそうと思って動いてみると気持ちも弾んでくるかもしれません。
キャリアコンサルタント 久保賢司