県警をかたった同様の不審電話も確認
警視庁新宿警察署の「代表」と同じ電話番号から、犯罪との関連が疑われる不審な電話が相次いでいますが、ほかの県警をかたった同様の不審電話も確認されていて、詐欺の被害も起きています。
警視庁によりますと「末尾が0110の新宿警察署の代表番号から電話がかかってきた」という相談や問い合わせが、3月11日から、多い日には200件以上、1週間の合計で、およそ650件寄せられています。
不審電話は、東京以外でも全国で確認されていて、電話に出ると、新宿警察署の捜査2課を名乗る人物が「あなたに犯罪の容疑がかかっている」などと言って不安をあおるということです。
最近、急増している警察官をかたった特殊詐欺の手口とみられます。
同様の事例は、ほかの警察でも確認されていて、愛知県警察本部によりますと、3月11日と12日、いずれも名古屋市内に住む40代の男性と30代の女性が、それぞれ県警本部の「代表」と同じ番号から着信を受けました。
「資金洗浄事件の容疑がかかっている」などと言われ、2人とも現金をだましとられたということです。
警察署などを装った番号が、特殊詐欺グループなどからの電話で表示されることは以前からありましたが、これまでは、番号の前に「+」と「国番号」が表示されるケースが多く、偽の電話と見抜く手がかりがありました。
今、相次いでいる電話には、こうした特徴がなく、着信画面を見ただけでは詐欺の電話と見破ることはできないということです。
警察は
▽相手の名前、所属部署、内線番号などを確認してから
▽必ず電話をいったん切り、
その上で
▽家族や知人に相談したり、最寄りの警察署に相談するよう呼びかけています。
警察官かたった特殊詐欺など被害急増 若い人も被害に
警察庁によりますと、警察官をかたって金をだましとる特殊詐欺などの被害は、2024年、1年間に全国で4192件と、2023年と比べて3000件以上増加しています。
こうした手口について、警視庁は2月にホームページに動画を公開し、注意を呼びかけています。
動画では、会社員の男性が仕事中、突然、スマホに着信があり、ビデオ通話をつなぐと、「捜査2課の刑事」を名乗る偽警官が、スーツ姿で登場します。
「警察手帳」や「逮捕状」を示して「あなたにマネーロンダリングの容疑がかかっている」などと不安をあおり、「カネの流れを捜査するために必要だ」として、資金を指定したネットバンキングの口座に移すよう要求してきました。
【警視庁が注意呼びかけ】▽そもそも、警察官がスマホのアプリで取り調べや事情聴取をすることはなく、ビデオ通話で、警察手帳や逮捕状を見せることは絶対ありえない。
▽特殊詐欺の被害者といえば、高齢者が多いイメージを持たれているかもしれないが、警察官をかたった手口は、若い人もだまされている。
▽お金の話が出たら、いったん電話を切り、本当の話かどうかを警察署に確認してほしい。 |
◆実際の発信元と異なる番号を表示「スプーフィング」とは実際の発信元と異なる電話番号を、相手側に表示させる手口は「スプーフィング」などとも呼ばれ、形を変えながら、以前から特殊詐欺に悪用されています。
特殊詐欺の被害が深刻化し「心当たりのない着信」に注意が払われるようになると、詐欺グループが携帯電話からかけているにもかかわらず、東京の市外局番の「03」を相手に表示させ、企業や官公庁から発信しているように見せかける手口などが広がりました。
警視庁は「今回、どのような仕組みで番号が偽装されているのかは明らかになっていない」としていますが、任意の電話番号を表示させる技術は、すでに事業者向けサービスなどでも広がっていて、こうした仕組みが悪用されている可能性もあると考えられます。
新宿警察署の浅見英之生活安全課長は「警察署の番号であっても、まずは落ち着いて、相手の名前、所属部署、内線番号などを確認してください。必ず電話をいったん切るようにお願いします。そのうえで、家族や知人に相談したり、最寄りの警察署に相談してください」と話していました。 |
実際に新宿警察署の“代表番号”から着信 愛知の女性は
愛知県に住む40代の女性のスマートフォンには、3月14日の朝、実際に新宿警察署の「代表」と同じ番号から電話がかかってきました。
ふだんから詐欺に気をつけているという女性は、知らない番号や国際電話の番号から着信があっても、すぐに出ることはせず、ネットで検索して調べるようにしています。
着信は、番号の末尾が警察でよく使われている「0110」だったため、女性は「何かあったのか」と少し緊張しながら、そのまま電話に出たということです。
相手は若い男性の声で、「新宿警察署の捜査2課」を名乗りました。女性の氏名も知っていたということです。
そして「奈良県警から捜査要請があって電話をしている。
あなたの口座が、詐欺に使われたので、奈良県まで来て捜査に協力してほしい」などと求めてきました。
不審に思った女性が電話を録音しようとしたところ、相手は察知したとみられ、すぐに電話を切ったということです。
女性は「ふだんは知らない番号からの電話には出ませんが、警察署の番号だったので、少しドキドキして、信じてしまう危険性も感じました」と話していました。
配信日:2025年3月17日
今回のこの報道に関して
「警察署の代表番号」からかかってくる電話が詐欺に使われているという今回の報道には、強い危機感を覚えます。
実在する番号を悪用する「スプーフィング」手口は、従来の「詐欺らしい特徴」が通用しない新たな段階に入ったことを示しています。
以前は、「+」や見慣れない国番号の表示から違和感を覚える余地がありましたが、今回のように警察の正式な番号がそのまま表示されてしまうと、多くの人が信用してしまうのも無理はありません。
警察官を名乗り、実名や捜査機関の名を挙げて不安をあおる手口は非常に巧妙であり、年齢を問わず被害に遭うリスクがあります。
今回のように、電話の内容が不審であれば、たとえ信頼できる番号であっても「一度電話を切って確認する」という冷静な判断が被害防止に繋がります。
警察が「ビデオ通話で警察手帳を見せることはあり得ない」と強調しているように、現実には行われない対応を装うのが詐欺の常套手段です。
「電話の相手が名乗った組織名や氏名を一度メモに取り、正規のルートで確認する」「すぐに返答や行動を求める話には応じない」という基本を再確認することが、今後ますます重要になるでしょう。
今回の報道を通じて、「番号の見た目だけでは安全かどうかは判断できない」という認識を、より多くの人が持つことを願います。
そして、少しでも違和感を覚えたら、家族や警察、信頼できる第三者に相談する勇気を持ちたいものです。