厚生年金に加入できる賃金の要件について
「年収106万円の壁」と呼ばれる、厚生年金に加入できる賃金の要件について、厚生労働省は、最低賃金の引き上げに伴い、必要性が薄れているとして撤廃する案をまとめました。
パートなどで働く短時間労働者が厚生年金に加入できる要件は、従業員51人以上の企業で、週20時間以上働き、月額8万8000円以上、年収にして106万円以上の賃金を受け取っている学生以外の人が対象となっています。
これについて、厚生労働省は短時間で働く人も、将来、受け取る年金を増やす必要があるとして、先月開かれた審議会に、企業規模の要件を撤廃するなどの案を示し、了承されました。
さらに、焦点となっている「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金の要件について、厚生労働省は、最低賃金の引き上げに伴い、週に20時間以上働けば月額8万8000円以上、年収にして106万円以上を受け取る地域が増え必要性が薄れているとして撤廃する案をまとめました。
ただ、撤廃時期については、週に20時間働いても賃金の要件を満たさない地域もあるとして最低賃金の動向を踏まえて決定する方針です。
一方、保険料の負担を避けるため働きを控えることへの対策として厚生労働省は労使で折半している保険料を、企業側がより多く負担できるようにする特例を設ける案を示しています。
これについて月の給与がおおむね13万円未満の人に対象を絞った上で、中小企業の負担が大きくならないように軽減措置も検討する方針です。
厚生労働省は来週開かれる審議会にこうした案を示し、来年の通常国会に必要な法案を提出したい考えです。
配信日:2024年12月5日
今回のこの報道に関して
今回の「106万円の壁」の撤廃案は、短時間労働者が厚生年金に加入しやすくなることで、将来の年金受給額が増え、労働者の生活が安定することを目的としています。
しかし、本当に労働者の生活が良くなるのかという点については慎重に考える必要があります。
賃金要件が撤廃されても、保険料負担が増えることで手取りが減り、短期的には生活の負担が増す可能性があります。
また、保険料の負担を避けるために働く時間を調整する、いわゆる「働き控え」が広がる懸念も残ります。
この点について、企業側の負担を増やす特例が提案されていますが、企業の負担が増えることで雇用全体が縮小するリスクも考慮すべきです。
特に、中小企業にとっては、従業員の厚生年金加入によるコスト増加が経営を圧迫する可能性があります。
これに対して、軽減措置の検討が進められていますが、現場で実際にどれほど効果を発揮するのか不透明です。
中小企業の未来はどこへ向かうのか、またこれが地域経済全体にどう影響するのか注視が必要です。
さらに、派遣会社や単発バイトを紹介する人材派遣業界への影響も見逃せません。
労働者が安定した年金加入を求める一方で、こうした働き方を好む層にとっての選択肢が減少する可能性があります。
働き方の多様性を維持するための新たな政策も求められるでしょう。
この政策案は、日本が高齢化社会に突入し、将来の社会保障制度を支える仕組みを強化する試みでもあります。
日本全体としての経済構造や労働環境がどのように変わるのか、そしてそれが国民の生活にどのように影響するのか、議論を深める必要があると感じます。
改革が現実のものとなった場合、労働者、企業、政府がいかに協力し、互いに利益を共有できるWin-Winの関係を築けるかが鍵となります。
未来に向けたバランスの取れた政策が実現することを期待したいです。